1945年に広島・長崎に原爆が投下され多くの死傷者が出ました。このあまりにも悲惨な出来事は、一般市民だけでなく、世界中の政治家・軍人・核兵器開発技術者にとって核兵器の威力を知るきっかけになりました。

それまでの戦争は通常兵力や武器による攻撃でしたが、アメリカやソ連などの超大国は「通常兵力や武器による直接的な交戦ではなく、互いに相手の国に攻撃の意図を捨てさせるための核兵器開発」に力を注ぐようになりました。

一方、増え続ける核兵器から身を守るために開発されたのが「核シェルター」です。しかし、核シェルターの普及率は戦後70年以上経過しても国によりかなりばらつきがあります。

今回の記事では、なぜ国ごとに核シェルターの普及率が異なるか?についてご紹介します。

 

1.世界の主な国の核シェルター普及率について

日本核シェルター協会によると世界の主な国の核シェルター普及率は次のようになっています。
〈人口あたりの核シェルター普及率〉

スイス    100%
イスラエル  100%
ノルウェー  98%
アメリカ   82%
ロシア    78%
イギリス   67%
シンガポール 54%
日本     0.02%

表を見ると一目瞭然ですが、スイスやイスラエルなどに比べ、日本は北朝鮮などの核ミサイルの脅威にさらされているにも関わらず、あまりにも普及が進んでいません。

次の章では、その理由を探るべくまずはスイスでの核シェルター普及の理由についてお話しします。

2.スイスは核シェルター設置を法律で義務化

そもそもスイスで核シェルターが普及したのは、法律で義務化したためです。1950年代、スイスでは武力攻撃に対して全国民は保護される権利を持つことが制定されました。

キューバ危機の翌年の1963年には連邦法により、核シェルターの設置を義務づけられました。さらに同じ年に全国的な核シェルターの管理を行う「連邦民間防衛庁」を新設しました。

現代のスイスでは、必ずしも自宅の下にシェルターを設けなくてもよいことになっています。しかし、その代替の方法としてシェルターを設置しないなら1500スイスフラン(約19万円)を自治体に支払い、近くの公共シェルターに家族全員ができる場所を確保することになっています。

またスイスでは、簡易式の核シェルターが1万スイスフラン(日本円で約80万円)、地下に設置するタイプは30万スイスフランから設置できるため、日本に比べ安くできるのも普及率が高くなる要因の1つです。

3.冷戦時代から国をあげて取り組んできたアメリカ

アメリカは冷戦時代からソ連と核兵器で対抗してきたため、世界で最も早く核兵器に対処しなければならなかった経緯があります。

当初は政治家・政府高官のための核シェルターが完備されました。しかし、米ソの核兵器が増えるにつれ、国民の命を守る必要性に迫られ、徐々に全土に市民用に核シェルターを設置してきました。

またアメリカでは、国内に核シェルターのメーカーが多数存在するのも普及率の高さの要因になっています。

4.様々な理由で核シェルターの普及が進まない日本

日本では北朝鮮を始め東アジア全体に核兵器の脅威が高まりつつあるにも関わらず、普及率は低い状態です。

まず、国民全体の核兵器の脅威に対する意識の低さがあげられます。連日のように北朝鮮のミサイル開発の報道がされていますが、「どうせ核ミサイルは飛んでこない」と考えている方は少なくありません。大地震が起きた後に、買い占め騒ぎが起こるように災害が起きてから慌てて準備する方が多いことを見れば、核シェルターの普及が進まない理由が見えてきます。

また核シェルターに対する基本的な知識を持つ方が少ないことも理由にあげられます。日本人が核シェルターと聞くと、「地下の要塞のようなもの」というイメージを持つ方が多いため、「設置したいけど私の家では無理」と最初から諦めている方が多くいます。

確かに地下に設置する本格的な核シェルターもあります。しかし、核シェルターには「家庭用核シェルター」もあり、まだまだ認知されていないのも要因になっています。また核シェルターの値段も他国に比べ割高で、アメリカなどからの輸入に依存することが多いのも実状です。

 

〈核シェルターの普及は官民一体となることが重要〉

核ミサイルは世界中に多く存在します。また核攻撃を脅威に感じる方も多くいます。しかし、核シェルターの普及には、官民一体となった取り組みが不可欠です。

核シェルターを設置するにはある程度の出費が必要です。しかし、政府が核攻撃の脅威を正しく認識し、国民の命を守る対策を取らなければ民間任せでは限界があります。

そのためには国民全体が核攻撃の脅威を現実のものとして認識し、世論として国に働きかけ、国が核シェルターの設置への補助金助成や立地条件の整備などをすることで普及率を高めることができます。

今回の記事を読んで、核シェルターの普及率が国により差がある理由を知っていただけたらと思います。